GLONASS の問題

GPS + QZSSではFix率が高いのに、GPS + GLONASS + QZSSではFix率が極端に低下する場合があります。

主な原因

1.GLONASSはFDMA方式を採用している

GPS、QZSS、Galileo、BeiDouは、全衛星が同じ周波数帯を共有するCDMA方式ですが、GLONASSだけは衛星ごとに周波数がわずかに異なるFDMA方式を採用しています。

このため、

  • 二重差(Double Difference)では、受信機固有の周波数依存誤差が完全には打ち消されません。
  • 基準局と移動局で受信機の機種やGNSSチップの世代が異なる場合、GLONASS特有の**周波数間バイアス(Inter-Frequency Bias:IFB)**が発生します。
  • IFBが適切に補正されないと、GLONASSの搬送波アンビギュイティが整数値へ収束しにくくなり、結果としてFix率が低下することがあります。

2.基準局と移動局の受信機の組み合わせ

基準局と移動局が異なるメーカーや受信機アーキテクチャの組み合わせでは、GLONASSのIFB特性が一致しない場合があり、GPS単独よりFix率が低下することがあります。

一方、GPSやQZSSはCDMA方式のため、この影響をほとんど受けません。


3.観測環境(遮蔽物など)

GLONASSの軌道傾斜角は約64.8°(GPSは約55°)であり、衛星の見え方がGPSとは少し異なります。

そのため、建物や樹木などの遮蔽物がある環境では、GLONASS衛星だけが不利な配置になる場合があります。

ただし、この要因だけでFix率が大きく低下するケースはそれほど多くなく、多くの場合はIFBの影響の方が支配的です。


切り分け方法

RTKLIBには pos2-glomodear という設定があり、GLONASSのアンビギュイティ解決方法を変更できます。

  • off:GLONASSの整数アンビギュイティ固定を行わない(GLONASSはFloat解のまま使用し、GPS等のみでFixを試みる)
  • on:通常のGLONASSアンビギュイティ固定を行う
  • autocal:IFBを自動推定しながらアンビギュイティ固定を行う
  • fix-and-hold:Fix-and-Hold方式を利用してIFBを推定・保持する

実際にこれらを比較したところ、autocal が最もFix率が高く、標準偏差も良好な結果となりました。

そのため、OrbisNet Sigma では autocal をデフォルト設定としています。もちろん、用途や受信機の組み合わせに応じて、他の設定もプルダウンメニューから選択できます。


本を書きます

拙者、かねてより心血を注ぎ開発して参りましたGNSS測量システムにつき、このたび一書を著す決意を固め候。

仮題は、

『AIと創るGNSS測量システム』
― RTK・VRS・CLASより、スタティック測量ソフト開発に至るまで ―

にござ候。

これまで、RTKによる高精度測位、VRS・CLASを用いた補正技術、スタティック測量、基線解析、平均化、さらには測量ソフトウェアの開発まで、試行錯誤を重ねながら歩んで参りました。

本書では、それらを単なる技術解説としてではなく、「なぜその仕組みが必要なのか」「どのような考えで設計したのか」、そしてAIと共にシステムを創り上げていく過程も含め、一つの流れとしてまとめたいと考えております。

まことに浅学非才の身ながら、これまで積み重ねてきた経験が、これからGNSSや測量システムの開発を志す学生や技術者の一助となれば、この上ない喜びに存じ候。

完成の暁には、もし御縁がございましたら御一読いただき、忌憚なき御意見や御叱正を賜れれば幸甚に存じます。

まずは決意表明まで。

さて、ここからが本当の勝負にござる。

第四次産業革命の中にあって、私たちがなすべきこと

これより先の世は、技と営みが目まぐるしく変わりゆく時代となる。
古き地図は用をなさず、新たな羅針盤と堅き足腰を要する。
されば、己の目と心と手を鍛え、着実に道を測りゆくべし。

第一に、数字の道具と網を自在に操る心得を養うこと
筆や算木にかわる機械(パソコン・スマートフォン)を手にし、網(インターネット)の道筋を知り、身を守る術を学び、情報を正しく扱い、必要に応じて自ら機械に命を与える術(プログラミング)をも会得せよ。
これなくして、先の長き道は闇の中である。

第二に、物事を深く吟味し見極める力を磨くこと
見聞きしたことをただ鵜呑みにせず、常に「なぜか」「果たして真か偽か」と疑いの目を向けよ。
諸々の情報を集め、吟味し、己の判断を筋道立てて固め、さらに自らを省みる。
この繰り返しこそ、正確なる測量の要諦に他ならない。

第三に、人と心を通わせる術を磨くこと
測量の旅は一人では成し得ぬ。
相手の言葉に耳を傾け、気持ちを汲み取り、自らの考えをわかりやすく伝え、時に情を抑え、時に表情や身振りをもって心を伝えるべし。
互いに信頼し、手を携えてこそ、遠き難所も越えられる。

第四に、新しきを生み出す心を育むこと
人工の知恵(AI)は既知の道を速やかに歩むであろう。
しかし、未だ誰も見たことのない山を見つけ、新たな道を切り開くのは、人の創造の力である。
心を自由に馳せ、多様な景色に触れ、失敗を恐れず一歩を踏み出し、己の内に火を灯すべし。
これぞ人の本領なり。

第五に、生涯学び続ける姿勢を貫くこと
伊能忠敬は五十の齢を越えてから日本国を歩き測り、七十余歳まで筆を執った。
世の技も営みも止まることなく移り変わる。
されば、今日より明日を、少しでも高き処へ登る心構えを生涯持ち続けよ。
人生百年に及ぶ時代と言われる今こそ、終生の測量の旅を己に課すべし。

これらを日々怠らず実践する者こそ、この大いなる変革の波の中にあっても、己の道を確と定め、堂々と歩み続けられるであろう。

OrbisNet Sigma の改良

これまでの実装(網平均、PCV統合DB、機種登録検定機能、マルチメーカー対応)により、Sigmaはかなり便利になってきました。

残っている課題は主に信頼性の可視化と運用効率、そしてトレーサビリティの3つだと感じています。

今回の改良で、アンビギュイティ判定、残差プロット、仰角別残差分布を表示(信頼性の可視化)ができるようになりました。

OrbisNet Sigma スタティック測量の質問と回答

【質問】
図のようなケース(1,2が未知点、301,302が既知点、AセッションとBセッションでそれぞれ基線を観測し、1-2基線が両セッションに重複して含まれる形)は、OrbisNet Sigma で網平均可能ですか?

【回答】
可能です。OrbisNet Sigma の現在のアーキテクチャでそのまま扱える構成になっています。

【理由】
・基線解析はセッション単位で独立
基線解析はペアワイズの単偏差(2周波受信機間)で行われるため、Aセッション(301-1, 301-2, 1-2)とBセッション(1-302, 2-302, 1-2)はそれぞれ別個に解析されます。

・網平均は解析済み基線ベクトルの集合を入力とする
Static最小二乗法は、どのセッションで得られたかに関わらず、基線ベクトル一式をグラフ化し、既知点(301, 302)を固定、未知点(1, 2)を未知数として平均計算します。従って、AセッションとBセッションの基線を混在させて1回の網平均にかけることは問題なく可能です。

・図の構成は環閉合・冗長観測の典型例
1-2間の基線がAセッションとBセッションの両方に含まれる(図の二重線)ため、これは同一基線の重複観測となり、網平均における冗長度(自由度)を持たせる典型的なネットワーク構成です。環閉合差のチェックにも適した形です。

【注意点】
重複基線1-2を入力するときは、どちらも1→2のように方向を同じにしてください。
実際の観測データが無いので、ご質問の網平均が可能かどうかプログラムを調べてみましたが、逆方向に入力すると、Aセッションの1-2基線だけが採用され、Bセッションの2-1基線が投入されない可能性があります。
つまり「2セッション分の冗長観測」のはずが実質1本分しか効かず、図で意図している「AB両セッションの1-2基線による冗長性(環閉合チェック相当)」が失われる状態になりそうです。
次期バージョンで改良します。

TKY2JGD 座標変換 CGI (Perl)を公開

日本測地系は、2001年の測量法改正前まで使用されていました。2002年4月1日以降、改正された測量法に基づき、基本測量や公共測量では世界測地系を用いることが義務化されています。

日本測地系から世界測地系への変換は、国土地理院の Web版 TKY2JGD Ver.1.3.80 (Web版TKY2JGD)の方が一括変換ができて便利ですが、CGI Perl を忘れないように作成してみました。

https://www.clas.jp/api/tky2jgd.cgi

国土地理院の測量計算サイトが提供するREST API「世界測地系座標変換(TKY2JGD)」を呼び出すCGIスクリプトです。ブラウザ上のフォームから値を入力して変換できます。

API仕様出典: https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/api_help.html

  • 「変換方向」(日本測地系→世界測地系 / 世界測地系→日本測地系)を選択
  • 「変換方法」で緯度経度/平面直角座標のどちらで入力するか選択
  • 値を入力して「変換実行」
  • 変換結果が一覧表示される。 各行の「コピー」ボタンで1項目だけ、 「結果をコピー」ボタンで全項目をタブ区切りでコピー可能 (Excelなどへの貼り付けにそのまま使えます)
  • 生のレスポンスXMLも下部に表示・コピー可能

注意点

  • GSI側のレート制限: 同一IPから 10秒間に3回まで(TKY2JGD・PatchJGDは負荷が 大きいため)。

農業用マシンガイダンスシステム開発開始

AI時代だからこそ、肉体労働に夢を持てる社会を

AIの進歩は、私たちの暮らしを大きく変え始めています。
今後は一部の高度な技術者がAIを駆使して高い付加価値を生み出す一方、多くの人はAIでは代替できない細かな手作業や肉体労働に従事する割合が増えていくかもしれません。

もちろん、体を動かす仕事が好きな人もいます。
しかし、そうではない人にとっては、「生活のために仕方なく働く」という毎日になってしまう可能性があります。
私は、そんな社会にはしたくありません。

たとえ肉体労働であっても、自分で考え、工夫し、技術を活かしながら働ける環境であれば、人は夢や希望を持って生きられるはずです。

そこで、この老人が一つ考えました。

私の住む鹿児島県姶良市は、農業が身近な地域です。
しかし、多くの地域と同じように、高齢化や後継者不足という課題を抱えています。

私はこれまでAIを活用してさまざまなソフトウェアを開発してきました。
その経験を農業に生かせないだろうかと考えた結果、まず取り組もうとしているのが農業用マシンガイダンスシステムの開発です。
最初はトラクターの走行を支援するガイダンスシステムですが、将来的には自動運転へと発展させたいと考えています。

しかし、私が本当に作りたいのはソフトウェアではありません。

AI、GNSS、プログラミング、電子工作などの技術を活用しながら、農業という現場で新しい価値を生み出せる環境です。

農業に興味があり、「AIを使って何か新しいことに挑戦したい」と考える若い人たちにとって、これほど面白い分野はないと思います。
マシンガイダンスだけでなく、ハウス栽培、環境制御、収穫支援、データ分析など、AIが活躍できる場面は数え切れないほどあります。

もし姶良市から、このような取り組みが生まれ、「農業×AI」のまちとして全国に知られるようになればどうでしょう。
新しいことに挑戦したい若者が集まり、地域に活気が生まれ、高齢化が進む農業にも新しい風が吹くかもしれません。

私は、その最初の一歩として農業用マシンガイダンスを作ろうとしています。
一人の開発から始まる小さな挑戦が、やがて地域を変え、日本の農業を少しでも明るい方向へ変えるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。


基準機だけがNTRIP経由でFixを取り、移動機は基準機からUART経由で直接補正データを受け取って、基準機に対する相対位置(cm級)を測位する方式です。この場合、NTRIP設定は1つで済みます(移動機はNTRIPを使わない)。ただし移動機からの出力形式がGGAではなくUBX-NAV-RELPOSNED(相対位置+方位が直接出力される)になる。

AIは、人から仕事を奪うための技術ではない。
人が肉体を動かしながらも頭を使い、学び、工夫し、夢を持って働ける社会をつくるための技術である。

私はその第一歩として、農業用マシンガイダンスの開発に挑戦します。

ちょっと一息 未来の農業の想像図

ChatGPTさんと会話しながら、素晴らしい画像を作ってもらいました。

広大な平野一面に、台風や豪雨にも耐える強靭な温室群が何十キロにもわたって並びます。
屋根は全面が高効率太陽光パネルで覆われ、昼間に発電した電力で夜間はLED栽培を行います。

温室内部ではAIが温度・湿度・CO?濃度・養液を自動制御し、ドローンやロボットが巡回して生育状況を監視します。
人は管理センターから遠隔で運営し、天候や季節に左右されず年間を通じて安定生産が可能です。

もし日本の農業の半分以上がスマート農業化された未来を描くなら、

九州・北海道・東北の平野部に巨大温室クラスター
温室屋根は太陽光発電所を兼ねる
内部はLEDによる多段栽培
自動走行ロボットとドローンが24時間稼働
農業用水は循環利用
AI統合管制センターが全国の農場を管理

という「農業版の半導体工場」のような風景になるでしょう。

想像すると、鹿児島から見れば霧島連山や桜島を背景に、地平線まで続く銀色の温室群と太陽光パネルが輝き、その中を自律飛行ドローンが行き交う、まさに次世代の食料生産基地という景観になります。